日本政治思想 (放送大学教材)

日本政治思想 (放送大学教材) の詳細

最近は近世から戦後までの通史も教科書として出るようになった日本政治思想史。本書（1993年改訂版）が扱うのは明治・大正期のみで対象時期は絞られているが、この時期の流れに限って言えば、類書のなかでも分かりやすい。産業化の時代に私益と公益の緊張関係をどう解決するのかという問題が、立憲主義のあり方とも絡み合わせられながら通奏低音となっている。実践的な示唆を引きだしたい人なら、今日の競争社会に重ねて読めるかもしれない。長らく絶版で価格が高騰しているが、（最近は概説書も多い）ちくま学芸文庫あたりに入ってもよさそうな作品。目次は以下の通り。序論1. 明治啓蒙の政治思想一、国民国家の形成と明治啓蒙思想二、福沢諭吉―「政治の診察医」三、福沢諭吉の政治思想―「一身独立して一国独立す」2. 自由民権の政治思想一、明治啓蒙思想の継承と反逆二、植木枝盛―政治運動と「道理」の追求と三、中江兆民―「東洋のルソー」3. 明治憲法体制期の政治思想一、明治憲法体制の展開と新世代の登場二、徳富蘇峰と平民主義三、中江兆民―「恩賜の民権」から「回復の民権」へ四、陸羯南と国民主義4. 明治社会主義の二つの道一、明治憲法体制と社会主義二、幸徳秋水―「志士仁人」の社会主義三、片山潜―労働者の団結と都市自治の社会主義四、直接行動・議会政策論争と「大逆事件」5. 田中正造の政治思想一、田中正造の生涯―村から出て村に帰る二、田中正造の憲法思想―「宇宙間」の憲法と大日本帝国憲法のあいだ6. 大正デモクラシーの二つの道一、大正デモクラシーの知識人と民衆二、吉野作造―「立憲国の先覚者」三、吉野作造の政治思想―「民本主義」における民衆と指導者四、河上肇―東洋的マルクス主義五、河上肇の政治思想―「利己心」の否定と肯定のあいだむすびにかえて