バリュー投資入門―バフェットを超える割安株選びの極意

バリュー投資入門―バフェットを超える割安株選びの極意 の詳細

今世紀のバリュー投資の良書。今でも全く役に立つ投資の方法を提案している。ファンダメンタル派の総本山はコロンビア大のベンジャミン＝グレアムであり、その教え子が世界で最も成功している投資家、ウォーレン＝バフェットであるのもご存じの通りである。ファンダメンタルズ派にも様々な種類があるが、バフェットの方法は、財務諸表を丹念に調べて企業価値を独自に算出し、現在の株価がその企業価値（バリュー）よりも大幅に低いなら投資をするアプローチで、「バリュー投資」と呼ばれている。本書はそのバフェット流「バリュー投資」の内容に敬意を払い踏襲しつつも、また別のアプローチを提案している。本のサブタイトルには「バフェットを超える割安株選びの極意」とある。世界トップクラスの資産家であるバフェットを超えるとは挑戦的な言い方だが、しかしあながちホラとも言えないかもしれない。それには理由がある。まず、絶対普遍の投資アプローチは存在しないという事である。もちろんファンダメンタルズ派の大原則である、「企業価値を正確に分析し、十分に割安と言える安全圏で買う」という命題は今後何百年経ってもその通りだろう。しかし、細かいアプローチは時代に合わせて変わるのは当然である。本書のバリュー投資のエッセンスは、資産価値評価、収益性、事業性の3つにある。熱心なバリュー投資の実践家・研究家からすれば聞き飽きた言葉かもしれないが、本書のアプローチは斬新である。知っておくだけでも価値があるだろう。本書ではより詳しく、具体的な計算方法までを説明している。加えて、有名な成功した8人のバリュー投資家のエピソードを紹介している。バリュー投資と一口に言っても幅広いアプローチがあり、個性がある。日米で市場環境は違うし、読者には株だけではなく債権や不動産も扱う方もいるだろう。これらのエピソードにはバリュー投資のエッセンスが詰め込まれており、ヒントが詰まっている。■初心者には難しいが理解する価値ありひとつだけ注意点を挙げておくと、タイトルに「入門」と書かれているが、株の初心者にとっては理解するのがかなりきつい。財務会計や、できればファイナンス理論の基礎知識があって初めて理解できる内容である。財務諸表分析や企業価値計算の説明も、ある程度知っている人を前提に書かれている。本編が351ページと比較的薄いのも余計な説明を省いているためである。ちなみにうち半分がアプローチの説明、他半分はバリュー投資家のエピソード紹介に割かれている。ほかのレビューで、「翻訳分が読みづらい」との指摘があったが、確かに部分的にはその通りである。他の英語原著で日本語に翻訳された専門書に比べても、多少の不自由さは感じた。従って全くの初心者は基礎知識の不足と、文そのものの読みづらさによって、苦労する内容には違いない。ただし、本気で株式投資で成功したいのなら、特にファンダメンタルズ分析を重視しているなら絶対に読むべきである。苦労して知識をつけなければならないのか？という疑問に対しては、こう答える。知識豊富なプロが毎日情報収集や分析をしている中、この程度の手間を惜しんでは、丸腰で戦場に行くようなもので絶対に勝てない。苦労して稼いだ財産を誰かに献上することになるだけなので、投資を控えることを強く勧める。ただし投資方法を磨くための手間を惜しまない人には、有益なこと間違いない内容である。